「飛蚊症、あなたも一度は経験しているかも・・・」 
明るい所や白い壁、青空などを見つめたとき、目の前に虫や糸くずなどの『浮遊物』が飛んでいるように見えることがあります。視線を動かしてもなお一緒に移動してくるように感じられ、まばたきをしても目をこすっても消えませんが、暗い所では気にならなくなります。このような症状を医学的に『飛蚊症』と呼んでいます。
「その浮遊物の正体は」
眼球の中の大部分は、硝子体と呼ばれるゼリー状の透明な物質がつまっています。
角膜と水晶体を通して外から入ってきた光は、この硝子体を通過して網膜まで達します。ところが硝子体に何らかの原因で“濁り”が生じると、明るいところを見たときにその濁りの影が網膜に映り、眼球の動きとともに揺れ動き、あたかも虫や糸くずなどの『浮遊物』が飛んでいるように見え、飛蚊症として自覚されます。この“濁り”には、生理的な原因によるものと病的な原因によるものがあります。 
「以前から見える『浮遊物』の数や形に変化なければ安心!?」
母体内で胎児の眼球がつくられる途中では、硝子体に血管が通っていますが、眼球が完成するとこの血管は無くなっていくのがふつうです。しかし、生まれたのちも血管の名残りが硝子体に残存すると、これが“濁り”となって飛蚊症の症状を感じることがあります。
このタイプの飛蚊症は、生理的なもので健康な目にも起こる現象ですから、症状が進まないかぎりはあまり気にしなくてもいいでしょう。
「高齢者の飛蚊症は、ほとんど老化現象!なんと、近視の人にも同様の現象!」
歳をとると硝子体はゼリー状から液状に変化し、硝子体は次第に収縮して網膜から剥がれます(硝子体剥離)。このような変化が飛蚊症の症状をもたらしますが、髪が白髪になるのと同じようなもので、生理的な現象です。また、若い人でも強度の近視の場合には、この硝子体剥離が早期に起こりやすく、しばしば飛蚊症の訴えがあります。
眼科の検査において、このタイプの飛蚊症と診断された場合は治療の必要はなく、多少うっとうしいと感じますが、慣れれば特に問題はありません。
「飛蚊症の症状の急な変化は目の病気を知らせるサインです!」
● 網膜裂孔・網膜剥離
硝子体剥離やその他の原因で網膜に穴が開いたり(網膜裂孔)、その穴を中心に網膜が下の層から剥がれて硝子体の方へ浮き出す(網膜剥離)ことがあります。このような現象が起こると初期症状として目の前を飛ぶ『浮遊物』の数が急に増加し、放っておくと失明にいたります。
網膜裂孔の治療はレーザー光線で裂孔の周囲を焼き固め(光凝固法)、剥離を防止します。これは通院治療で行えますが、網膜剥離を起こすと入院・手術が必要となります。
● 硝子体出血
糖尿病や高血圧、外傷などにより眼底で出血が起こり、その血液が硝子体に入ると突然、飛蚊症の症状を感じたり、目の前に赤いカーテンを引いたように感じます。出血の量や部位によっては視力が著しく低下します。出血が少なければ自然に治ることもありますが、止血薬や硝子体に流れ込んだ血液の吸収を早める薬で治療します。症状により出血部位にレーザーを当てる光凝固法を行うこともあります。
● ぶどう膜炎ぶどう膜に細菌やウイルスが進入したり、眼のアレルギー反応により炎症が起こると、血管から白血球や滲出物が硝子体に入り込み、飛蚊症の症状をかんじます。炎症がひどくなると『浮遊物』が増加し、視力が低下します。炎症を抑えるための内服薬や点眼薬で治療します。

〔Dr村上のまとめ〕
あなたも経験ありませんか?
飛蚊症と光視症
視覚障害もたらす危険性も・・・・・
1割が要治療
目の前に黒い点やゴミの様なものが飛んでいるように見える症状の「飛蚊(ひぶん)症」や目の端の方で、何か光っているような感じがする「光視(こうし)症」。
Q早期治療が必要な「飛蚊症」もあるのですか?
A「飛蚊症」の大半は、加齢等による無害な症状の場合も多いのですが、一部に網膜が裂けてしまう「網膜裂孔」を発生したり、更に進行して網膜がはがれてしまう「網膜剥離」などの視覚障害をもたらす重篤な眼病を合併している場合もあり、早期の診療が大切です。
日本眼科医会の調査でも眼科を受診した飛蚊症の人の約一割が、網膜裂孔や剥離で治療が必要であったことが報告されています。
網膜裂孔や剥離は、ボクシング選手が患う病気として知られていますが、眼球を打撲しなくても、誰でも患う可能性がある疾患です。
一般的に多い発病のケースとして、20代〜40代に近視等が原因で発生する場合と、50代〜60代に加齢による眼の変化に伴い発生する場合があります。
早期発見が重要
Q特に、早期の診察が必要な「飛蚊症」の兆候は?
A網膜裂孔や剥離の初期症状として、飛蚊症や光視症が急に増悪することがよくあります。
即ち、黒い点やゴミのように目の前に飛んでいるものが急に増えたり、目の端の方で光っている症状の頻度が増えた時は、網膜裂孔や剥離が発生している可能性があります。このように、網膜裂孔や剥離による視覚障害を防ぐためには、早期発見と治療が特に大切なのです。
Q早期発見できれば、どの様な治療が可能ですか?
A網膜裂孔のみの場合は、レーザー光疑固治療が有効で、治療も通院のみで大半は10分程度の時間で終了します。
そして、光疑固により網膜が充分に接着するまで数週間の運動制限などをすれば、網膜剥離の発生を防止できることが多いのです。
しかし、既に網膜剥離が発生していれば、手術治療が必要となり、更に治療が遅れると視覚障害を残します。
このような眼の異常を感じたら、手遅れになる前に、すぐに眼科専門医での検査をお勧め致します。
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