Glaucoma 緑内障
06. 緑内障に効く東洋医学実証の経絡ツボ療法
血流改善と眼圧下降に有効なツボのマッサージ
ツボの位置を知ろう
緑内障は、その人の眼が耐えうる以上の眼圧により、視神経が傷害される病気です。「緑内障」とはどんな病気?の中でも述べた通り、近年の日本緑内障学会の調査でも、40歳以上では17人に1人(約6パーセント)、70歳以上では10人に1人(約10パーセント以上)が緑内障にかかっていると判明しています。しかも、そのうち72パーセントもの人が、眼圧が正常範囲内にある「正常眼圧緑内障」だということが分かって大きな問題となっています。
この正常眼圧緑内障は、眼とその周囲の血流の悪化も一因であると考えられています。その根拠として、この病気はしばしば偏頭痛、首肩凝り、低血圧や高血圧の過剰治療、冷え症の女性、強めの近視などのかたに、そのリスクが高いことが挙げられます。これらの症状の多くが、血流障害と関係している点からも、正常眼圧緑内障が眼とその周囲の血流障害、あるいは酸化ストレスなどによるものと推察されているのです。
そこで、その改善法の一つとして眼の血流を良くするという治療法が、古来より伝承され、東洋医学でもその有用性が実証されています。実際に、緑内障では視神経の血流が低下している部位と視野障害のある位置が一致していることが知られており、薬物治療のみでは下がらなかった眼圧が、毎日ツボの刺激を続けて併用して血流改善を図ることで眼圧が下がったり、視野障害の進行が抑えられたとの成果も数多く報告されています。日ごろから眼に関わるツボを刺激することを心がけて、眼病の予防や進行を抑えたいものです。
後頭部のツボ
私たちの首や後頭部には、脳につながる頚動脈や椎骨動脈などの血管が密集しており、視中枢も後頭葉にあることから後頭部のツボを刺激することで眼と脳の血流が促され、眼圧の下降と眼精疲労の解消などが期待できます。
首の後ろの太い筋肉の外側で、髪の生え際のくぼみにある眼の特効ツボです。
天柱の指一本分外側にある眼の特効ツボです。
[ポイント]
天柱と風池は、眼とその周囲の血流を促進させ、多くの眼病や眼精疲労の改善に特に有効なツボです。天柱や風池をもむコツは、両手の親指をそれぞれツボの位置に当て、残り四本の指で後頭部を大きくつかみます。親指でツボを押しながら、同時に残りの指で後頭部をつかみもみする感じで
行なうと、眼や頭頂部の血流がとてもよくなります。ツボを押す際の呼吸法のコツは、息を吐きながら五秒間ゆっくりと押し、息を吸いながら力を緩めて各五回ずつ行なってください。
後頭部の骨の出っ張りとぼんのくぼを結んだ線の中間点から、左右五ミリ離れた二ヵ所です。両手の人差し指と中指をそろえて横向きに当て、ゆっくり左右にスライドさせるように50回マッサージします。
その後、続いて上下にスライドさせるように50回マッサージします。眼科からの点眼薬などでの治療に加えて、この項陽点と後述する眉頭(攢竹)のマッサージを併施することで、房水の流れがスムーズになり緑内障の進行を食い止めるのに有効であった症例を当院でも数多く経験しています。
眼の周りおよび顔の経絡ツボ療法
血液や房水の流れを促すツボは、「膀ぼう胱こう経けい」という経路上にあります。
その中でも特に眼の周りや顔のツボは、目に直結しているため効果が出やすいのですが、絶対に強くこすらず消しゴムを使うとき程度の力でツボ押しを行なってください。また、決して眼球自体を押さないようにご注意ください。
眉頭の内側にあるくぼみです。ここは眼の血流や房水の流れを促すスイッチのような役割を持つ急所で、緑内障の特効ツボです。後頭部のマッサージの後に、両手の人差し指で上下左右に50回ずつマッサージします。
2〜3週間ほど続けると、眼圧の下降や血流の改善に好影響が期待できます。眼科から点眼薬を処方されている人は、点眼薬をさしてから閉眼したまま指でのマッサージを行なうと効果的です。点眼薬が2剤ある場合は、1回目と2回目の点眼の合間に行なうと点眼薬の眼内への吸収が促進されるのでお奨めの方法です。
尚、ツボ治療を併施して眼圧が下がったからといって、油断して眼科の治療を中止したり点眼薬を止めたり決してしないでください。ツボマッサージは、あくまでも点眼薬の効果を高めるための補助的な役割をすると考えて、毎日気長に長く続けていきましょう。
眉の真ん中にあります。緑内障や糖尿病網膜症、黄斑変性、網膜色素変性症に有効な眼のツボです。両手の人差し指と中指で左右に細かく揺らしながら10秒ほどマッサージします。
眉中の真上で、眉の上縁から親指の幅1本分上にある緑内障と白内障に有効なツボです。眉中と同様に手の人差し指と中指で左右に細かく揺らしながら10秒ほどマッサージします。
目頭の内側の骨のくぼみにある緑内障や白内障、黄斑変性など多くの眼病に有効な眼の基本ツボです。両手の人差し指を当てて、上下に細かく揺らしながら10秒ほどマッサージします。
こめかみの近く、目尻と眉尻を結んだ縦線の真ん中から外に指2本分ほど離れたくぼみにある緑内障、白内障や眼精疲労など多くの眼病に有効な特効ツボです。両手の人差し指と中指で、左右に細かく揺らしながら10秒ほどマッサージします。
瞳の真下の骨の縁にある緑内障と共にドライアイや眼精疲労などに有効な特効ツボです。両手の人差し指と中指で左右に細かく揺らしながら10秒ほどマッサージをします。決して眼球を直接こすらないようにしましょう。
瞳の真下の骨の縁から指2本分下の頬骨がくぼんでいる地点にある緑内障、白内障の他、多くの眼病に有効な眼の基本ツボです。息を吐きながら人差し指で上に押し上げるように5秒ほど押し、息を吸いながら力を抜きます。これを5回くり返しましょう。
これらのツボを全体で5〜10分ほどかけてもむようにマッサージします。押すと気持ちのよい痛みが感じられるツボがあれば、そこは時間をかけて押してください。それ以外のツボは5〜10回ほどを目安に押すとよいでしょう。ただしツボ刺激の際、決して眼球自体を押さないように注意しましょう。
眼の周りの血行をよくする「おしぼり温タオルパック」
緑内障をはじめとする眼病の大きな原因の一つとして、血流の滞りを何度も指摘してきましたが、実際に緑内障の患者さんの非常に多くの方に「まぶたやその周辺が冷たい」という東洋医学での「冷え」の現象が見られるのです。
眼の血流が悪化すると、房水の流れも停滞してしまうので、眼圧が高くなりやすいのです。さらに、血流の悪化により視神経や網膜への酸素や栄養の供給も少なくなって働きが悪くなり、緑内障の進行が憂慮されます。
また、まぶたが冷えて眼の周りの血流が滞ると、涙の質が悪くなる怖れも出てきます。涙には、眼の表面を薄い油の膜で被って涙の蒸発を防ぐ役割をする「油層」がありますが、血流が悪くなると涙の油分が固まり、睫毛の内側に並ぶ油の分泌腺(マイボーム腺)が詰まってしまいます。そうなると、油層が薄くなって涙の質が低下するのです。
すなわち、涙の上層部を占める油の層である油層が薄くなると、涙を眼の上に留めておくことが困難になり、涙が蒸発しやすくなるためにドライアイの原因になったり、緑内障の人では点眼薬の効き目が低下することにもなります。緑内障の進行を抑え、涙の質をよくするためにも、眼を温めて血流をスムーズにすることが大事なのです。
そこで、前述のツボ刺激を行なう前に、眼の周囲や後ろ首の部位に適温の蒸しタオルなどを当てて、温めてから行なうとより効果的に眼とその周囲の血流の改善が期待でき、お奨めの方法です。
「おしぼり温タオル=目枕」の方法
「緑内障を予防し、進行を防ぐ生活術とは?」のページでもご紹介しましたが、温タオルの温度は人肌よりもやや熱いと感じる約40°C〜41°Cが適温です。タオルをよく絞って、顔の上半分を覆うくらいの大きさにたたみ、両目の上にできれば五分から10分間ほど温タオルを当ててください。最近は、適温で心地良い湿熱の「蒸気でホットアイマスク」®️(花王)という商品も市販されており、手軽な上に効果が約20分も持続し有用です。
多忙で時間がない人でも、3分間程度を一日2〜3回行なえば、10分間のおしぼり温タオルと同等の効果が得られます。朝昼晩の食後など、時間を決めて行なうと習慣づけがしやすいでしょう。特にスマホを長時間見続けたり、パソコン作業やデスクワークを長時間行なう人は、眼の負担がかなり大きく非常に疲れやすいので、作業などの合間にこまめに行なうとより効果的です。
どうしても時間がとれず、1日1回のみ行なう場合には、入浴時にお風呂のお湯を使って行なえば簡単に温タオルが作れます。その上、入浴時は自律神経中の副交感神経が優位になるので、心身がさらにゆったりとリラックスでき、房水の分泌もよくなります。リラックスするという点では、就寝前に布団やベッドの上で使い切りできる「蒸気でホットアイマスク」®などのホットアイシートを使用するのもお奨めです。深呼吸をしながら行なうと効果がさらに高まり、心地良く深い眠りを誘う効果もあり、お奨めの方法です。
治療を継続することで、緑内障の病状の
進行を抑えて視覚障害や失明を
予防することができます。