自律神経のバランス向上による更なる進化を目指して
院長エッセイ
(宇医会報より)
自律神経の研究の第一人者で、母校•順天堂大学医学部の小林弘幸教授による
と、現在殆どの人が交感神経と副交感神経のバランスが崩れているとのことであ
る。すなわち、時間に追われる多忙な生活や仕事でのプレッシャーに加え、夜も
携帯やパソコンでのメールやインターネット、24時間テレビが日常化した現在
では、夜間もずっと強い光刺激を浴びながらストレスや緊張が続いて、交感神経
が優位になったまま朝まで副交感神経が上がらない状態が慢性化し、バランスを
崩している人が非常に多いことを指摘している。
このような現代社会の中で、日常の動作を少しだけゆっくり行うように心掛ける
だけで、副交感神経の低下を防ぎ、あるいは高めることが出来ることを提唱し
ている。その機序は、ゆっくり動くことで呼吸も安定し、自律神経のバランスも
整うことで、末梢までの全身の血流が改善して、活動性も高まり適正な判断がし
やすくなるという良いスパイラルが生まれるためである。私自身の診療や手術に
おいても、常に最高のパフォーマンスと成果を維持するために、自律神経のバラ
ンスを上手く調整してゆくことが重要であると考えている。
即ち、朝は自律神経が最も安定した状態であり、交感神経が少しずつ低下し副交
感神経が優位となってくる昼過ぎ頃までに、より効率良く診療を進めていくこ
とは、医療の安全管理と長期的な疲労軽減の観点からも有用であると考えた。こ
の様な点から、朝早起きして、より早い朝食を終えた後、通勤の車中でも、心身
のリズ厶を整える般若心経を暗呪し、朝のジョギングでは、かつてのテレビドラ
マ「スクールウォーズ」の主題歌 となった麻倉未稀の「HERO」やKANの「愛は
勝つ」をテーマ曲として早めにテンションを揚げるように努めている。
そして、これまでの日々の診療や手術は、とにかく全力で朝からぶっ通しで終わ
るまでほぼ休まずにノン ストップで行うようにしていたが、自律神経を上手に
調整しながら今以上の成果を維持してゆくコツがあることに気付いて、①姿勢を
正して診療の合間にこまめに深呼吸を繰り返す②こまめに水を飲む③ムンテラ
の話し方は早口を控え、ゆっくりはっきりと丁寧に、より温か味のある話し方に
努める④診療や手術時の器具もゆっくり静かに置く⑤診療時の表情は口角を上
げる意識で、いつも笑顔で患者さんに応対する様に注意している。
また、個人の自律神経の良悪はその周囲にも伝播し易いので、出来るだけ笑顔で
深い呼吸を意識し、口調をゆっくりはっきりした温か味のある話し方で厶ンテ
ラやスタッフへの指示にも配慮して、良い自律神経の 状態をチー厶としても保
つように努めるようになった。
そして、診療後や手術終了後は残業は一端止めて、九州山地や三角半島、島原普
賢岳などの雄大な風景や夕日や星座等を眺めながら、ゆったりモードの副交感
神経を刺激するようなスロージョグを続けて今日一日の反省をしたり、嫌なこと
などの心身のデトックスを 行いながら、美しい風景や汗と共に綺麗なものだけ
心に残るように努めている。そして、終業時の三行日記として、①その日最も反
省したり、悔しかったこと。②その日最も感動したり、良かったこと。③明日の
目標を記載して、心身のデトックスによる良質の睡眠と 目覚めにも配慮する様
になった。
年齢を重ねながらも営々と安打記録を積み重ねてゆくイチロー選手の様に、これ
からも自律神経を意識してバランスの調整に努め、診療や手術により最高のパフ
ォーマンスと治療成績が得られるよう、日々努力して進化を続けていきたいと考
えている。