「超高齢者の患者さんから学ぶ」
院長エッセイ
(宇医会報より)
超高齢化社会が日本にも到来し、百歳以上の方々が百万人を突破してすでに久しい。そして、百歳以上の超長寿者の方の男女比が1対10と、女性が著しく多くお元気であることに改めて驚かされる。このような経緯から、私も日常の外来診療においても、超高齢者の患者さんとお話し、その健康長寿の秘訣をお伺いするように努めている。そして、このようなお元気な健康長寿の高齢者の患者さんの特徴として、明るく前向きな性格で、くよくよせず、朗らかな方が多いように思う。また、これといった大病も患わず、肥りすぎでもやせすぎでもなく、タバコも吸わず、大酒も飲まず、生涯にわたる生き甲斐持っていて、その人なりに毎日の運動を欠かさず続けておられることが共通する特徴であると推察されるのである。小院に毎月来院される九十七歳のM・Fさんは、要介護度もまだ要支援で、一人暮らしでほぼ自立しておられる患者さんだ。週3回の通所リハビリでカラオケを歌うのが楽しみで、しかも、毎日午後の定時になると手押し車でお気に入りのコースを散歩をするのが健康の秘訣だそうである。一人暮らしも気にせず、非常に朗らかで明るく、くよくよしないいつも前向きでお元気な方だ。ヘルパーさんが週一回の掃除と買い物をしてくれるので、あとは自炊で困っていないとのことである。しかも、近くに娘さんがいて、時々面倒を見て下さるとのことだ。そういえば、プロスキーヤーとして百歳近い健康長寿を保った三浦雄一郎氏も、スキーの技術の錬磨と研賛に励み、世界でも最高齢者としてエベレストからの滑降を遂行し、生涯を通してスキーに生き甲斐を持ち、そのために、足腰を常に健康に保つ独自の体操や筋力トレーニングを欠かさず、自分の健康長寿のための自炊料理も工夫を重ねて調理されていたという。因みに、「アンチエイジング医学の基礎と臨床」(日本抗加齢医学会編集)においても、健康長寿者の特徴として、大きな疾患を病っておらず、太り過ぎず、大酒を飲まず、喫煙せず、朗らかでストレスを乗り越えられる前向きな強い精神力を持ち、適度の有酸素運動を継続して行っているケースが多いと記されている。このため私も、朝2キロ、夜5キロの適度のジョグとパーソナルトレーナーの指導による毎週の体幹のインナーマッスルの鍛錬を継続するようにしている。さらに今後も、新しい医療知識や手術手技の習得をさらに進め、年1回の学会講演と英語研究論文発表や著書の執筆なども楽しみや生き甲斐として続けながら、少しでも患者さんのお役に立てるよう努力を続けていきたいと考えている。そうして、開業医としての診療の中でも、このような超高齢の健康長寿の患者さんに学びながら、日々の診療にも還元し、また、自分自身の健康長寿にも生かしていきたいと思う。