Glaucoma 緑内障
07. 緑内障治療に効く正しい目薬のさし方に注意
緑内障治療の第一歩は「点眼薬」治療で、点眼薬治療のみで約7割の症例で進行を抑制
私たちの視野は、加齢とともに少しずつ狭くなっていきます。ところが、緑内障の場合は視野の低下が早めに進行し、自身でようやく気が付くころには視覚障害に陥っていたというケースも少なくありません。脳が視野の見えにくい部分を補う作用をするために、最初のうちは自身では気が付かない場合が多いからです。このため、眼科での定期的な受診を心がけて、早期発見と治療を継続することが最も大事です。
早期に緑内障と診断されて、眼圧を適正にコントロールする治療を続ければ、その後の進行が抑えられます。米国の眼科学会の調査でも、眼圧をコントロールする治療を行なうことで、加齢による視野の低下と同程度にまで進行が抑えられると報告されています。
視神経は、眼圧が高いほど傷つきやすくなります。一度傷ついてしまった視神経は、残念ながら元に戻ることはないので、緑内障の病気の進行を防ぐためには適切な治療を続けて、眼圧を少しでも下げることが重要なのです。
治療法としては、著者も正会員として所属する日本緑内障学会の「緑内障診療ガイドライン」に準じ、主に点眼薬による薬物治療が主体で、併用療法や代替療法としてレーザー治療が実施され、さらに眼圧下降が必要な場合などに手術を追加して実施する治療法が一般的に行なわれています。緑内障の種類や患者さんの状態で、それぞれに適した治療が行なわれますが、一般的にはまず第一に点眼薬による治療の継続が中心となり、点眼薬治療のみで約7割の症例で進行が抑制されることが明らかになっています。
「正常眼圧緑内障」でも、眼圧下降治療は有効
眼圧が正常範囲内(10〜20mm)にあるにもかかわらず、視神経が弱いなどの理由で視野が欠けていく「正常眼圧緑内障」の場合でも、眼圧を下げる治療を行なうことで、視野障害の進行を抑えることができます。眼圧を1mmHg下げると、緑内障の進行リスクが10パーセント低下するということが分かっています。
日本人では、眼圧の高い人の数は少ないのですが、眼圧が高くなるほど視野異常が見られる人の割合は高くなります。ですから、高眼圧症の患者さんに対する眼圧下降治療は、緑内障への移行による発症を低下させることが知られています。
比較的多い間違ったさし方の例
点眼薬をさした後にまばたきをしていませんか?
まばたきをすると、涙と一緒に点眼薬も流れ出てしまい効果が下がります。また、流れ出た薬が、まぶたなど眼の周囲に附着してしまい、まぶたの炎症などの副作用を起こしてしまう恐れもあります。さらに、眼から鼻へと抜ける鼻涙管を通して、目薬が体内に吸収される可能性もあります。
点眼薬をさすときは、1回に1滴で充分に行き渡るようになっています。
2滴以上さすのは、ただ溢れてしまうだけで、すでに述べた通り、眼の周囲のまぶたがただれたり黒ずんだりする副作用が出ることがあります。
眼薬の容器がまぶたや睫毛に触れるようなさし方はやめましょう。
容器に雑菌が入って眼の感染症の原因になることもあります。
正しい点眼法で緑内障の進行を抑えるコツ
正しい点眼法を身につけることで、薬の効果が最大限に発揮され、また副作用の予防・軽減につながります。
- ① 手をきれいに洗い、清潔にします。
- ② 少し上方を向いた状態で下まぶたを軽く引き、一滴を確実に点眼します。(1回1〜2滴の場合もありますので、医師または薬剤師の指示に従ってください)。容器の先がまぶたや睫毛に触れないように要注意ください
- ③ 点眼後は、1〜5分ほどまぶたを閉じるか、目頭を軽く押さえます。まばたきは厳禁です。
- ④ あふれた点眼薬は、清潔なガーゼやティッシュで拭き取ります。
点眼薬一滴は0.03〜0.05ミリリットルですが、眼の中には0.02ミリリットルぐらいしか入らないため、必ず点眼薬の一部は眼からあふれてしまいます。それを放っておくと、眼の周囲のまぶたの皮膚がかぶれるなどの副作用が出ることがありますので、ガーゼやティッシュを用意して下まぶたを被ってから目薬をさすようにしましょう。 - ⑤ 二種類以上の目薬を使用する場合は、3〜5分以上間隔をあけて点眼します。その理由として、先に点眼した目薬が、後から点眼した目薬によって洗い流されるのを防ぎます。急ぐ時でも2〜3分は空けましょう。
治療を継続することで、緑内障の病状の
進行を抑えて視覚障害や失明を
予防することができます。