Glaucoma 緑内障
05. 緑内障を防ぎ抑える最適な運動療法・体操法
緑内障を防ぎ眼圧を下げる「スマイルコアジョグ」®による嬉しい多くのメリット
有酸素運動と眼圧の関係
緑内障を引き起こす要因として眼の血流障害が指摘されていますが、その原因の一つとして考えられるのが運動不足です。眼と体の血流を良くして緑内障の予防や進行抑制をはかるには、後述する無理のないニコニコペースでカロリー消費率も格段に高い「スマイルコアジョグ」®などの適度の有酸素運動が最適です。
一週間当りの運動回数および運動時間と、五年間の眼圧変化との関連を研究した九州大学眼科での研究では、運動の回数と時間が多いほど眼圧が低いという結果が出ています。さらに、広島大学眼科の研究でも、有酸素運動を続けたら三ヵ月で眼圧が下がったという結果が発表されました。ところが運動をやめたらわずか三週間で眼圧が元に戻ってしまったというのです。すなわち、有酸素運動を無理なく長く継続することが最も大事なのです。
そこで無理なく継続でき、効果的な運動法として当院(むらかみ眼科クリニック)で患者さんに提唱しご好評を頂いている眼と体に良い「スマイルコアジョグ」®をご紹介します。
眼圧を下げる「スマイルコアジョグ」®
下半身を大きく動かす有酸素運動は、血流の八割を司る下半身の血流を改善することで、眼や全身の血流を改善することになります。そこで、ウォーキングとは違って「体幹」の筋肉も鍛えることができる「スマイルコアジョグ」®をすれば、さらに効果が上がります。
加齢によって最も衰えやすいのが太ももの大腿筋です。次いで足を持ち上げる大腰筋、そして肩甲骨周囲の僧帽筋、胸の大胸筋などが衰えやすく、年に数パーセントは衰えるといわれています。年齢とともに安静時の代謝が減少するのは、体幹の筋肉が衰えてくるからです。30歳を境に衰え始め、70歳になると筋肉量は半分近くになってきます。
そうならないためにも、「スマイルコアジョグ」®で体幹の筋肉を鍛えておきましょう。年齢を重ねてからでも遅くはありません。特にこの「大腰筋」は、背骨と大腿骨をつないで体を支えたり足を持ち上げたりするのに重要な筋肉で、「老化防止筋」とも呼ばれ、スポーツ医学やアンチエイジング医学でも非常に注目され重要視されています。
これらの体幹の筋肉は、立っていたり座っているだけでも使われるため、この体幹の筋肉がしっかり働いていると、姿勢がよくなり、目や体の疲れも軽減し、平常時の新陳代謝も増します。そこで、体幹の筋肉を上手に使った「スマイルコアジョグ」®をすると、ウォーキングや体操などと比較してカロリー消費も約二倍と格段に多く、かつ継続することで運動能力が上がり、眼と体の血流も改善して眼圧も下降しています。
正しく歩くには、「体幹」を使った正しい姿勢の確保が大事です。部屋の壁に後ろ向きに立ち、チェックしてみてください。壁に後頭部を付け、頭の頂点が上に引っ張られているようなイメージを持ちましょう。
後頭部に続いて、肩甲骨が軽く壁に付く程度に両肩を後に引き、胸を開きます。ここで大事なポイントは、腰の上の背中の部分の隙間に注意することです。手のひらを二枚重ねて壁との間に収まるのが理想的です。手が入らなければネコ背、空きすぎれば反り気味です。立った時、お尻の穴をしめるように意識すると、背筋がぴんと伸びます。足は、左右のひざを閉じて、ふくらはぎとかかとを壁につけるイメージです。走る時の姿勢は頭のてっぺんから足先まで、真っ直ぐの柱をイメージして、その柱を斜め前に倒して前傾姿勢を作ります。そのために、アゴを少し上げることで背中が自然な弓状になり、脚も引き上げ易くなります。こうして、「人」の字の姿の美しくきつくない「スマイルコアジョグ」®を楽しみながら始めてみましょう。
五つのポイントに注意しながら、無理なく自分のペースですぐにシューズを履いて始められるポイントをご紹介します。
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ポイント01「笑顔で会話できるペースで走る」
笑顔のペースでのジョギングをしましょう。すなわち、その人それぞれに合った疲れないペースで、笑顔で会話できる程度のペースを守ってください。初心者は時速3〜5キロ程度のウォーキングとやや同じか、やや遅いペースでまず始めましょう。それでも、カロリー消費はウォーキングの2倍近くになります。 -
ポイント02「足指の付け根から着地して、離地では蹴らずに後脚を伸ばす」
「走り方」で気を付ける点としては、かつてはかかとでの着地が推奨されていましたが、かかとで着地した場合、足への衝撃が非常に強くなりますのでお勧めできません。現在は、足の指の付け根から着地する「フォアフット法」をお勧めします。なぜなら、かかと着地はフォアフット着地よりも3倍も衝撃が大きいため、足の指の付け根から着地するフォアフット着地の方がケガをしにくく、足への負担が軽く楽に長く走り続けられるポイントなのです。そして、離地するときも地面を蹴らずに後脚を伸ばすイメージで歩幅を小さくして衝撃を和らげます。 -
ポイント03「アゴは少し上げて胸を開き、目線は少し遠くに」
アゴを少し上げることで、胸が開いて最も呼吸しやすく、背中が適度に弓状になり、脚が引き上げやすくなるメリットがあります。以前は、「気を付け」の時と同様にアゴを引くように指導されるケースが多かったのですが、世界陸上選手権で日本人で初めて短距離種目での銅メダルを獲得した為末選手も、アゴを突き出すようにして走って五輪にも三大会連続で出場し世界の舞台で活躍しています。また、医療の現場でも、意識のない患者さんの救急蘇生の最初の第一手として、気道を真っ直ぐに広げる気道確保のために、アゴを上げる処置が行なわれます。このようにアゴを少し上げて、目線は少し遠方を見るようにして走ると呼吸がとても楽になります。 -
ポイント04「口は開けて自然に”すーすー、はくはく”で二回目のはくをやや強く長めに」
口は開いていれば、自然に効率良く呼吸が出来ます。呼吸は心臓とともに最適に働くように自律神経でオートコントロールされているので、「スマイルコアジョグ」®の場合、特に鼻呼吸などにはこだわる必要はありません。 また、呼吸方法も「すーすー、はくはく」という日本初の五輪マラソン選手の金栗四三先生の方法もお奨めしますが、特に吐く場合に、2回目の吐息をやや強めに長く意識して吐くことで吸気もより多くの量の酸素が入ってくるので、二回目をやや強く長く吐くのを意識しましょう。 -
ポイント05 一日の目標はまず20〜30分から、少しずつでも良いので必ず始めましょう。まとまった時間が
取れない時は、10分×2〜3回と小分けにしても大丈夫です。(朝、夕、夜など)
慣れてきたら一日のトータルで30〜60分の「スマイルコアジョグ」®を目標として続け、週1〜2回は夜の部をレスト(休息日)として、早めに就寝して疲労回復と体調管理にも努めてください。
正しい「スマイルコアジョグ」®を確実に行なうための3ポイント
正しい立ち方と同様に、正しい「スマイルコアジョグ」®を確実に身に着けるために意識しておきたいのは「丹田」「肩甲骨」「骨盤」の三つの部位です。
東洋医学のツボの一つで、へその下4〜5センチメートル(指5本分くらい)の位置にあります。姿勢を正した状態で、深呼吸を深くゆっくりと行ないながら、丹田を意識して、体の”軸”を意識することが大切です。丹田を意識すると自然に体の軸が安定し、正しい姿勢を保てるようになります。
そして、頭のてっぺんから足先まで真っ直ぐの柱をイメージしながら、その場でジャンプしてみて下さい。離地も着地も足の指の付け根(フォアフット)で着地します。このイメージで、「スマイルコアジョグ」®でもフォアフットで着地して走りましょう。
体のバランスを取るのにとても重要な役割を果たしており、さらに多くの筋肉に囲まれています。「スマイルコアジョグ」®では、姿勢を正した状態でまずひじを後ろにまっすぐ引く動作から始まります。この時、ひじを後ろに引くことで、左右の肩甲骨を意識しながら内側に寄せることが非常に重要となります。この動作が骨盤の動きを促し、骨盤に付着した大腰筋が働いて、足が連動して前に進みます。このように三つの部位が連動することで、体をスムーズに前進させることができるのです。
特に長時間のデスクワークなどで後述する「前肩・前首」となり、肩甲骨が横に広がったまま固まって動きが悪くなっているとふだん感じていたら、ジョグの時に意識してひじを思い切り後ろへ引いて肩甲骨を動かしながらゆっくりジョグしてみてください。驚くほど体が軽くなり、スムーズに進むことができます。天使の羽のイメージです。肩甲骨に羽が付いていて、それを動かして歩いたり走ったりしているとイメージすることが大切です。尚、肩甲骨の近くには横隔膜を動かす呼吸筋があります。ジョグの時にひじを後ろに引いて肩甲骨を動かすことによりこの筋肉も動かすことができ、横隔膜が下がって深い呼吸ができるようになるため、楽な呼吸でより長く走れるようになります。
背骨と大腿骨をつなぐ非常に重要な部位で、上半身と下半身の動きを連動させてつないでいます。肩甲骨で始まった動きを下半身に伝えるためには、骨盤を正しく動かすことが大切です。そこで意識したいのが、骨盤を”少しだけ「前傾」させる”イメージです。骨盤が後傾していると、腰が引けて足が上半身より前に出てしまうため、骨盤をうまく動かすことができず、ネコ背になって疲れやすい状態になるからです。逆に、骨盤が少し前傾した状態にするためには、下腹の丹田とお尻を意識して少し力を入れ、お尻を後ろに引き上げるようにするのがコツです。これなら自然に背筋も伸びて、骨盤の上に背骨がまっすぐ乗っているのが実感できます。この姿勢で歩けば、しっかりと骨盤を動かすことができるのです。
正しい「スマイルコアジョグ」®のための準備体操
正しい「スマイルコアジョグ」Rを確実に行なうため、事前に体幹の筋肉にスイッチを入れる方法をお教えします。「体幹」をコントロールする筋肉は、肩甲骨の周りにある「僧帽筋」で、ここが動作の始まりとなります。
体の軸をまっすぐにキープする「腹筋」、さらに骨盤を動かす時にはお腹の深部にある「大腰筋」、着地後に体全体を前に押し出すときには「大殿筋」と太ももの後ろの「ハムストリング筋」、太ももを引き上げるときや着地を受け止めるときは「大腿四頭筋」が働きます。
それでは、「スマイルコアジョグ」®の前に、これらの体幹の筋肉が眠っている状態から目覚めさせるための約二分間でできる「ラクラク準備体操」をご紹介しましょう。
①足を肩幅くらいに開いてまっすぐに立ち、両腕を「W」の形に広げる。
②胸を開きながら、両ひじをグッと後ろに引く。この時、できるだけ左右の肩甲骨を内側に寄せる。背中の筋肉をしっかり動かすことで、僧帽筋が活性化する。※20回を1セットが目安
かかとを引き上げたり、体を前に押し出す推進力の元になる、後ろももとお尻の筋肉に効果がある。
①足を肩幅くらいに開いてまっすぐに立ち、両腕を正面に上げた体勢から、両手を腰に当ててスタンバイ。
②イスに腰かけるようなイメージで、お尻を後ろに突き出し、背筋を伸ばしてゆっくりひざを曲げる。骨盤を少し前傾させ、太ももからお尻にかけての筋肉も意識して動かす。※20回を1セットが目安
[ポイント]
②のお尻を後ろに突き出していくときに、背中がネコ背になり丸まっていると、後ろももに刺激を与えることができないので、背筋を伸ばしていることが大事。また、ひざがつま先より前に出てしまうと、太ももの後ろ側ではなく前側に効くスクワットになってしまうので要注意。
正しいフォームで「スマイルコアジョグ」®を確実に行ないましょう
前述したように、ジョグを始める時はひじを後ろに引いて、肩甲骨を内側に寄せます。肩甲骨が内側に動くと、同じ側の骨盤が自然に前に出て、その動きが下半身に伝わり、脚が自動的に前に出ます。肩甲骨の動きが下半身につながっているという感覚は、普段意識してはいないものなので意外かもしれませんが、ファッションショーのモデルさんも、胸を開き骨盤からしっかり脚を動かして歩いています。これがすっきりとした背中のラインをつくるポイントで、「スマイルコアジョグ」®にも応用できるのです。肩甲骨を動かすだけで骨盤が動きなめらかに脚が出る、非常に美しい走りになります。 「スマイルコアジョグ」®で走る時、体は次の①〜⑥の順番で連動したフォームで動きます。
①まず、アゴを少し上げ、目線はやや遠方に定め、胸を開き背筋を伸ばす。
②ひじを後ろに引いて、肩甲骨をしっかり内側に動かす。
③肩甲骨が自然に内側に寄る動きにより、この動作が背中から腰に伝わり、ひじを引いた側の骨盤が自然に前に出る。
④骨盤の動きが伝わり、脚が前に出る。
⑤足指の付け根から着地する「フォアフット着地」で地面につき、着地時に上半身をしっかりとまっすぐに脚の上に乗せるイメージを持つことが大切。
⑥離地では地面を蹴らずに後脚を伸ばすイメージで、歩幅を小さく小走り気味にして足の負担を和らげる。
「スマイルコアジョグ」®、正しいフォームで走るための二つの重要なポイント
腕は前に振るのではなく、「まっすぐに後ろに引くこと」を意識してください。体から離れすぎないようにまっすぐに引くことで、二の腕や背中の筋肉も鍛えられ、肩甲骨にその動きが伝わるのです。肩が上がらないように、力を入れすぎないことも大切です。脇を締め、まっすぐ後ろに引き上げること。前は自然に、後ろはしっかりと引くことを意識して、後ろに七、前に三の割合で振ってください。
足は前述の通り、足の指の付け根あたりで着地するフォアフット法をお勧めします。「かかとから着地」すると、体重の三倍以上も強いストレスが足にかかります。靴は、着地の衝撃を吸収する軟質なゲル状素材入りの靴底や、厚底でクッション性のある足に合った良い靴を選ぶことが大事です。着地時にはおへその4〜5センチメートル下にある東洋医学のツボの一つ「丹田」を意識して、軽く力を入れます。腹筋全体に力を入れるのではなく、丹田を意識するだけで十分です。そして、足の上に上半身をまっすぐ乗せるような着地を心がけると、体幹の筋肉を有効に使うことができて、効率よく楽に前に進むことができます。
「スマイルコアジョグ」®による嬉しい多くのメリット
- ◎眼と体に取り込まれる酸素量が増え、血流も良好になり、眼圧も下降することで緑内障、さらに糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などの予防と進行抑制などに有用です。
- ◎「歩き」よりも約二倍も効率的なカロリー消費によるダイエット効果と肥満防止にも有用で、メタボリックシンドロームの予防に役立つだけでなく、ウエストもくびれてスタイルも改善され、腸能力も向上して便通の良好化の効用も期待できます。
- ◎血糖値が下がり、糖尿病の予防と悪化を防ぐのにも有用です。「スマイルコアジョグ」®を継続することによってインスリンの効きが良くなり、血糖値が速やかに下がり、糖尿病の予防と悪化防止にも役立ちます。
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◎血圧を良好に保ちます。
「スマイルコアジョグ」®によるニコニコペースの運動を継続することにより、血圧も正常域に下がり、眼と全身の血管の動脈硬化の進行も抑えられ、眼底出血を防ぎ、脳卒中や心筋梗塞などの予防にも有用です。 -
◎善玉コレステロールが増えます。
ニコニコペースでの「スマイルコアジョグ」®などを継続することにより、善玉コレステロールが増え、高コレステロール血症の予防と悪化防止にも有用なことがわかっています。 -
◎無理なく長く継続することにより、抗酸化力と免疫力が高まり、眼と体の成人病を防ぎ抑えます。
「走り」よりも活性酸素の発生が格段に少なく、その「ホルミーシス効果」により、眼と体の抗酸化力と免疫力の向上により、緑内障や加齢黄斑変性などの眼病や癌などの発症や進行のリスクを抑えることができます。 -
◎認知症を予防し、脳の働きがよくなります。
ニコニコペースでの「スマイルコアジョグ」®を続けることにより、これらのリズミカルな運動が大切な記憶に関わる脳の前頭葉の「海馬」の細胞を増加させ、認知症の予防にも役立ちます。
このように緑内障だけでなく眼と体の病気を予防し進行の抑制にも有用な「スマイルコアジョグ」®を無理なく継続し、皆様が多くの効用による福音を享受されることを願っています。
「スマイルコアジョグ」®を実施する際の注意点
「スマイルコアジョグ」®を実施する際の注意点屋外で「スマイルコアジョグ」®を実施する際の注意点として、太陽光の有害光から眼を護まもるため、紫外線だけでなく、ブルーライトもカットする薄い黄色からオレンジ色の保護用機能カラーレンズを入れた眼鏡を装用し、出来るだけツバの広い帽子を着用して眼を護ることが大切です。
ただし、サングラスもファッション用グラスと品名に書いてあるものは、UVカットやブルーライトをカットする機能がついていないので要注意です。しかも、UVカットのレンズでもUVBだけしかカットしない商品が大半を占めています。これでは白内障や加齢黄斑変性になる危険を増やしてしまうだけなのです。
このため、UVAとUVBを共にカットし、表示が紫外線透過率0.1パーセント以下であるとともに、薄い黄色からオレンジでブルーライトも同時にカットする商品をお奨めします。同時にフレームについても、側方から日光が入って眼を障害する可能性を防ぐため、ゴーグルタイプで横も覆える商品がお奨めです。
また、眼鏡を使用している方は、眼鏡の上から紫外線とブルーライトを同時にカットできるオーバーゴーグルのサングラスも市販されていますので、「スマイルコアジョグ」®の際に装用して眼の保護にも努めることを推奨します。
眼の血流を改善し、緑内障を抑える「土俵入り体操」®
眼精疲労の原因としてよく指摘されるのが、パソコンやスマホの画面などを長時間見続けることで起きる肩甲骨周囲の筋肉の硬直です。画面を覗き込むことで「前首・前肩」、つまり首も肩も前方に出て「C字型」の猫背姿勢になっています。しかも私たちの頭部の重さは5〜10キログラム。姿勢が悪いと、頭の重量を首や肩の筋肉だけで支えることになり、それがひどい「こり」と眼精疲労をもたらします。この場合、単に肩がこっているというよりも、むしろ肩甲骨周囲のいくつもの筋肉の硬直に主な原因があることが非常に多いのです。
肩甲骨とは、背中の上部にある三角形の平たい骨です。体幹部の骨とは直接つながっておらず、僧帽筋や肩甲挙筋、菱形筋といった周囲の筋肉によって、宙づりの状態になっています。そこで、肩甲骨を大きく動かすことによって、それを支える筋肉の血流が促されます。蓄積されていた乳酸などの疲労物質も速やかに排出され、肩や首のこりが解消していくのです。その結果、首や後頭部から脳へ通じる血管の血流状態もよくなり、眼の周囲の血流改善へとつながります。すなわち、肩甲骨周囲を動かすことで、緑内障の進行を抑えたり、眼精疲労など眼にまつわるさまざまな不調の解消にも役立つのです。
肩甲骨周囲の筋肉も大きく動かしながらの「スマイルコアジョグ」®は、全身の血流を改善するのにとても良い運動ですが、さらに肩甲骨に焦点を絞って動かす、効果的な体操をご紹介します。名付けて「土俵入り体操」®です。
「土俵入り体操®」のやり方
- まず、足幅を肩幅より少し広めにして立ちます。そして、大きく息を吸いながら、顔の前で拝むように両手の手のひらを合わせます。このとき、背すじを伸ばし、両ひじをできるだけ合わせるようにします。
- 両手を合わせたまま、頭上へ持ち上げます。両ひじは、できる範囲までくっつけたまま上げていきます(肩甲骨をできるだけ上へ持ち上げるイメージ)。限界まで持ち上げたら、その高さを維持しながら、両側に開きます。このとき、肩と胸を大きく開くようにします(肩甲骨を寄せるイメージ)。
- 胸と手を左右に大きく開いた姿勢をそのまま維持しながら、手と腕を上下に動かします。特に、手を下へ動かすときは、肩甲骨を寄せ、引き絞るようにイメージしてください。この手の上下動を三回ほど繰り返します。
- わきを締めながら手を下ろし、へその辺りで打つように手を合わせ、最初の姿勢に戻ります。
ちょうど、大相撲の力士が土俵入りをするときの手の動きに似ています。呼吸は、手を上へ動かすときに深く吸い、下へ動かすときにゆっくり吐くのが基本です。この一連の動きを一セットとして、一度に3セット行なうことを目標としましょう。
また、仕事の合間など時間のないときに行なう、さらに簡便な方法もあります。
両手の指を組み合わせ、深く息を吸いながら頭上へ持ち上げます。そこで手のひらを返し、天に向けて伸ばします。手を伸ばし切ったらまた手を組み合わせ、ゆっくり息を吐きながら両手をさらに2〜3回後方に反らします。すると、肩甲骨の周囲の筋肉に対し、有効な刺激を与えることができます。
このようにして、「土俵入り体操」®を日常の生活習慣に取り入れて、肩甲骨周囲の筋肉をまめに動かしながら、眼と全身の血流を改善し、緑内障の予防と進行の抑制、そして、眼精疲労など眼に関わるさまざまな不調の解消に役立ててください。
治療を継続することで、緑内障の病状の
進行を抑えて視覚障害や失明を
予防することができます。