むらかみ眼科クリニック MURAKAMI EYE CLINIC

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Glaucoma 緑内障

03. 緑内障を予防し、進行を防ぐ生活術とは?

睡眠時の「夜間高眼圧」上昇を抑える上半身を挙上した傾斜睡眠での就寝法

傾斜睡眠は「睡眠時無呼吸症候群」と「緑内障」の予防に役立つ

睡眠時の「夜間高眼圧」上昇を抑えることが大事!

日本人の緑内障の七割以上を占める正常眼圧緑内障においても眼圧を下げることで進行が抑えられるので眼圧を下げる治療は非常に大事です。では、どのような時に眼圧の上昇が起こりやすいのでしょうか。 実は、安静にしているはずの睡眠時に、眼圧が上がりやすいことが分かってきました。睡眠時の眼圧上昇には、寝ている時の体の姿勢が関係しています。特に頭の位置ですが、頭部が下がっているほど眼圧は上がるのです。 私たちは眠る時には体を横たえます。起きている時よりも頭の位置が下がるため、眼圧は高くなると考えられます。日中、眼科を受診している時には眼圧が下がっていても、就寝時には気付かないうちにこのような「夜間高眼圧」となって知らない間に緑内障が悪化して病気を進行させてしまう場合もありうるのです。ですから、就寝時の眼圧コントロールが重要となってきます。

上半身を少し挙上して就寝する

睡眠時の体位(姿勢)と眼圧の関係についての米国での研究報告では、就寝中の眼圧上昇を防ぐために、頭(上半身)を挙上して就寝することが推奨されています。
米国で行なわれた研究によると、睡眠時の眼圧を下げるには、上半身を挙上して眠れば良いという報告があります。
事実、米国の研究では頭部を含む上半身を30度持ち上げて寝ることで、緑内障の人の94パーセントの眼圧が下がったというのです。しかも、約35パーセントの人は眼圧が2割も下がったことが報告されています。このように就寝時に上半身を少し高くして寝るだけで、この夜間高眼圧を防ぐことが期待できるのです。
それでは、どのようにして「上半身を少し高く」して眠ればよいのでしょうか。ただ枕を高くすればいいというものではありません。枕を重ねて頭だけを高くするのではなく、リクライニングベッドや医療用の傾斜マットなどにより、上半身全体を斜め20〜30度に起こします。このようにして寝ると、夜間高眼圧の防止に非常に有効なのです。
また患者さんによっては、上半身をゆるやかに傾斜させるだけでも夜間の眼圧下降に有効です。リクライニングベッドや医療用の傾斜マットがなくとも、枕や毛布、座布団などで代用して今夜からすぐにでも実行できます。ご自身の体質に合わせて20度でも無理なら15度程度でも良いので、出来る範囲の角度と方法で上半身を挙上した就寝を工夫し、習慣化して続けてください。

傾斜睡眠は、「睡眠時無呼吸症候群」と緑内障の予防にもなる

上半身を斜めに起こして寝るこの傾斜睡眠の方法は、「イビキ」の抑制にも効果があります。北海道大学眼科の研究により、睡眠時に呼吸が一時的に止まる「睡眠時無呼吸症候群」が「緑内障」にも悪影響を与えていることが分かりました。睡眠時無呼吸症候群は、イビキと呼吸停止を繰り返しますが、呼吸が止まって血液内の酸素濃度が低下すると、眼への血流も悪くなり眼圧を上げる要因にもなります。さらに、無呼吸時の酸素不足が眼圧の上昇を招くだけでなく、眼内が酸素不足に陥ることで視神経が治せないほどのダメージを受けて緑内障の発症を引き起こすというのです。事実、睡眠時無呼吸症候群の人は、心筋梗塞などによる突然死のリスクが高いだけでなく、緑内障の発症リスクが10倍も高く、症状も進行しやすいことが知られています。あおむけに寝ると、口が開いて舌根がのどへと落ち込み、気道が狭くなり呼吸がしにくくなってイビキをかき易くなるのです。
この時、上半身が斜めに持ち上げられていると、後頭部が後ろに倒れず口が開きにくいので、イビキも抑えられて呼吸が苦しくなることもありません。ですから、上半身を斜めに少し起こして寝る方法は、睡眠時無呼吸症候群の防止にもつながるだけでなく、緑内障の発症と進行のリスクも抑えられると考えられるのです。
また、横向きに寝るとイビキが抑制されるといわれますが、眼圧については上側の眼よりも下側の眼の眼圧 が高くなることがわかっています。実際、正常眼圧緑内障の睡眠時の姿勢の調査でも、習慣的に横向きで寝る 人の約七割が、下側にしている眼の方が視野障害が重いことが判明しました。したがって、いつも下向きになる眼の方が緑内障の視野障害が進みやすいということが考えられるわけです。ですから、眼科専門医として緑内障の進行を抑えるという観点からも横向きで長時間寝る習慣はおすすめできません。また、同じ理由で夜間高眼圧を招く「うつぶせ寝」の習慣も止めた方が良いでしょう。

緑内障を防ぎ抑える呼吸法と温冷タオルパックで眼と体の血流アップ

約40°Cの「温冷タオルパック」で血流アップ

眼の血流を改善する方法として「温冷タオルパック」を当院(むらかみ眼科クリニック)でも推奨し、緑内障をはじめ多くの患者さんにご好評を頂いています。「温冷タオルパック」とは、湯に浸して絞ったタオルと冷水に浸して絞ったタオルを交互にまぶたに当てて、血流改善を図る方法です。いったん温かいタオルで温めた眼の周囲を、心地よい程度の冷たいタオルで冷やすことで、眼の周囲の血管を拡張・収縮させます。その結果、眼の周囲の血流を大幅にアップさせるのです。
このようにして眼の周囲の血流が促されることで、新鮮な酸素や栄養が眼の中に送り込まれ、緑内障に最も関わりのある視神経が保護されることにより、緑内障の予防や進行を抑えることが大いに期待されるわけです。
かいタオルパックは、約40〜44°C程度のお湯で温めるか、湿らせたタオルを電子レンジで500Wなら30秒間加熱すればよいでしょう。これを、顔の上半分の大きさに畳んでまぶたの上に約4分間当てるようにしますが、高温によるやけどには特にご注意ください。 また、冷パックは冷水でタオルを湿らせて冷蔵庫で冷やしておけば出来上がります。ただし、長時間の冷や し過ぎは禁物です。これをまぶたの上に約1分間当てるようにしますが、この場合も冷やしすぎには注意しましょう。
この要領で血流アップ温冷タオルパックを温パックを4分、冷パックを1分ずつ交互に閉じた瞼の上に乗せて各3回繰り返すことで、眼の血流の著明な改善が期待できます。特に、入浴時など40°Cのぬるめのお湯に浸かりながらこの温冷タオルパックを習慣づけることは最適で、1日に最低1回、できれば3回ほど行なうと顕著な眼の血流改善効果が得られ、緑内障の予防と進行抑制に有用です。

温冷タオルパックを当てながら、視線を上下左右ななめに動かして、目の筋肉の凝りもほぐしましょう。

「ガムかみ」で手軽にできる眼圧下降法

緑内障の治療で最も大切なのは眼圧を下げることです。眼圧下降のための治療の基本は点眼薬を継続使用することですが、それに並行して生活習慣におけるセルフケアが有用です。日常、それも簡単にできるセルフケアの一つとして、「ガムをかむ」という方法があります。
北里大学医学部の研究で、1分間に80回のペースで20分間ガムをかんでもらう実験を行なったところ、ガムをかんでもらう前の平均眼圧が14.8mmHgだったのに対して、ガムをかんだ直後は13.8mmHgに下がり、20分後にも13.5mmHgと効果が持続したと報告されています。緑内障治療の研究でも眼圧が1mmHg低下することで緑内障進行のリスクが10パーセント下がることが知られています。ガムをかむことで平均眼圧でも1mmHg低下したのみならず、検査した75パーセントもの眼で眼圧が低下し、中には15パーセントも眼圧が低下したケースもあったことが明らかになったのです。
一般的に、眼圧が上がる原因として、自律神経が乱れ交感神経の緊張が続くことで目の周りの血流が悪化し、房水の流れが滞ることが知られています。しかし、ガムをかむことでリラックス効果が生まれ、自律神経の乱れが改善されて眼と体の血流がスムーズになり、眼圧が低下したと推察され、事実、北里大学での別の実験でも、10分間ガムをかんでもらったところ、かむ前よりも眼の血流量が70パーセントもアップしていたという結果が出ているのです。

眼と首に負担をかけないうつむき姿勢を防止する正しい姿勢の生活習慣

うつむき姿勢を続けることで眼圧が上昇します。
眼の健康にとって、もちろん体全体の健康にとっても、首は重要な役割を担っています。平均10キログラム以上の重い首を、7つの骨がゆるいS字カーブを描くようにして支えています。
背筋をまっすぐに伸ばして胸を張り、頭を上方に20度ほど上げた姿勢が、頚椎のS字カーブを保つために最適のスタイルです。しかし、現代社会においては、仕事や家事、スマートフォンやパソコン、勉強などの場面で、大半の人が悪い姿勢を長時間取り続けています。
このような首を痛める姿勢の中でも最も悪いのが、頭を下に向けるうつむき姿勢を持続させることです。仕事や勉強、スマートフォンやパソコンなどで背中が丸まって前かがみの姿勢になりがちですが、たとえ背筋を伸ばしてみても頭だけはどうしてもうつむいてしまいます。そうなると、頚椎のS字カーブがなくなって伸び、首に大きな負担をかけることになります。
首には、頭部へと血液を送る動脈が通っています。うつむく角度が大きくなるほど、動脈にかかる圧迫は大きくなり、血流も大幅に低下してしまいます。首を30度傾けただけでも、血流は通常の半分以下になるということが知られています。
日常生活でも、スマートフォンやパソコン画面を長時間見つづけたり、デスクワークや洋裁、編み物などでうつむき姿勢を続けたりすることで、血流も悪化して眼内の房水の排出が滞り眼圧が上昇する原因になります。
できるだけ長時間うつむいた姿勢を取り続けないで、少なくとも10分に1回は頭を上げ、首を回したり背伸びをしたりして、首の血流を回復させましょう。

背筋をまっすぐに伸ばして胸を張り、頭を上方に20°ほど上げた姿勢が、頸椎のS字カーブを保つために最適

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