Glaucoma 緑内障
01.「緑内障」とはどんな病気?
私たちの眼球の内部では「房水」と呼ばれる液体が循環しています。房水は、眼球内を循環し、眼の中に必要な酸素や栄養を運んでいます。この房水が眼の内側から外側に向かって圧力をかけており、この眼球内部の圧力を「眼圧」といいます。
しかし、房水の眼外への排出が滞り、房水の産生と排出の循環バランスが崩れて結果的に眼内の房水が過剰に溜まり、眼圧が上がると視神経が傷つき視野が障害されて狭くなったり、部分的に見えなくなったりしていきます。この病気が「緑内障」です。
「緑内障」は、初期から中期までには自覚症状が現れにくい眼病の代表格
日常生活で物や文字が普通に見えて視力も良く、特に眼には不調を感じていない人でも、深刻な眼病がひそかに進行している場合があります。
「緑内障」は、このように自覚症状の現われにくい眼病の代表格といえるでしょう。
初期から中期までは自覚症状がほとんどないため、早期発見が非常にむずかしく、気付いた時には手遅れになりやすい病気です。
日本緑内障学会が40歳以上の約3000人を対象に行なった調査では、緑内障であるにもかかわらず、自分が緑内障だと気付いていない人がなんと90パーセントにものぼりました。すなわち、多くの方々が緑内障であることに気付かないまま病状を悪化させている事実が浮き彫りになったのです。
緑内障の約七割が自覚症状なく進む「正常眼圧緑内障」
最近の日本緑内障学会の調査でも、40歳以上の約6パーセントが緑内障にかかっており、年齢が高くなるにつれて緑内障になる割合も高くなります。全国では約500万人もの患者さんがいるとみられていますが、眼科で治療を受けている人はその内わずか107万人程(約21パーセント)に過ぎません。
しかも、緑内障患者全体のうち約70パーセント以上もの人が、眼圧が正常範囲内( 10〜20mmHg)にある「正常眼圧緑内障」であることが判明し、大きな問題となっています。つまり大半の緑内障は、知らないうちに徐々に病状が進行し、治療しなければ視神経の障害が進み視覚障害に陥ることも多いのです。正常眼圧緑内障の原因は、視神経がもともと圧力に弱い人、視神経の血流が不足している人、あるいは加齢や強めの近視、低血圧や高血圧の過剰治療によっても起こりやすく、慢性的な片頭痛や首肩の凝り、冷え性などの体質の方や緑内障の家族歴のある方も緑内障になりやすいことが知られています。
頭重や肩凝りも前兆の「閉塞隅角緑内障」
一方、緑内障患者さん全体のうち12.5パーセントを占める「閉塞隅角緑内障」(体質的に眼内の水の排水口が狭い型)は、50歳以降の遠視の人に多く見られ、加齢とともに心労やストレスなどを契機に、突然「急性緑内障発作」を起こして眼圧が急上昇し、短期間で視覚障害に陥る場合もあります。このため、発見が早ければ、レーザー虹彩光凝固(LI)治療により失明防止が可能です。しかし、放置すると、眼のかすみや痛みなどに加え、頭痛や肩こり、嘔気などの全身症状も合併するため、眼科への受診が遅れて緑内障の治療が手遅れとなる場合も多いのです。
このように緑内障の治療法も、最近では新しい有効な目薬が次々に開発され、さらに、新しいレーザーによる治療や手術治療も進歩を遂げ、多くの方々の視覚障害を防止できるようになりました。
しかし、このような最新医療の恩恵に授かるためには、何と言っても早期発見 ・早期治療が最も大切です。
しかしながら残念なことに、特にご年配の方の中には、自分自身で緑内障とは気付かずに「白内障や老眼だけだ。」などと決め付けて、かなり眼が見えなくなるまでメガネなどでずっと我慢し、手遅れの状態となってからようやく眼科を訪れる例がまだ非常に多いのが現実なのです。
手遅れにならないために、眼の疲れやかすみを感じるようになったら、メガネを作り直す前に、早めに眼科専門医を受診されることをお勧めします。
治療を継続することで、緑内障の病状の
進行を抑えて視覚障害や失明を
予防することができます。